クライミングの真の魅力とは?

クライミングとは単なるスポーツの枠を超えた、精神的で知的な挑戦であり、創造性に満ちた行為です。このことを象徴するのが、山と渓谷社『フリー・クライミング上達法』あとがきです。著者であるヴォルフガング・ギュリッヒとアンドレアス・クービンの言葉から、クライミングが持つ深い意義と、その本質的な魅力を再発見できます。

クライミングは精神的な挑戦と創造の場

あとがきでは、クライミングは「精神的で知的な挑戦」であると語られています。このスポーツでは、あらゆる動作がルートごとに異なり、同じルートは二度と存在しません。そのため、クライミングには常に新しい課題があり、それを解決するのは精神の力です。

また、著者たちは「初見ルートのクライミングは創造的行為であり、芸術行為」と述べています。これは、単に技術や体力だけでなく、未知の岩場での判断力や創造力が求められるためです。特に初登攀(まだ誰も登ったことのないルートへの挑戦)は、クライマー自身の考え方や価値観を反映したものであり、そこに大きな意義があります。

グレードを超えた価値

クライミングには「グレード」という難易度の指標がありますが、あとがきでは「クライミングはグレードを超えた体験である」と強調されています。世界中に存在する無数のクライミングエリアには、それぞれ独自の条件と魅力があります。それらに挑戦することは、グレードという数字以上の価値を持ち、クライマーにとっての創造力や冒険心を刺激する体験となります。

クライミングを通じた旅と出会い

さらに、クライミングの醍醐味として挙げられるのが「旅」と「出会い」です。異なる文化や価値観を持つクライマーとの交流は、単なるスポーツの枠を超えた豊かな体験となります。この交流が新たな挑戦を生み出し、仲間とともにその挑戦を共有することで、クライミングの楽しみはさらに深まります。

グッぼるスタッフの視点

私たちグッぼるのスタッフも、このあとがきに深く共感します。クライミングは単なる運動や記録を追求するだけではなく、未知の課題に挑む創造的な行為であり、その過程で自分自身と向き合い成長するスポーツです。

私たちは、皆様がクライミングを通じて新たな体験を得られるようサポートしています。例えば:

  • 未知のルートに挑むための最新のギアや情報提供。
  • 旅先でのクライミング体験をサポートするアドバイス。
  • 初登攀や新しいエリア開拓のための実践的な提案。

クライミングを通じて、挑戦と創造の喜びを体験し、仲間と共有する時間をぜひ楽しんでください。

引用:山と渓谷社『フリー・クライミング上達法』あとがき

最初の予定では、我々は「肉体的・精神的対決としてのクライミング」という見出しの最終章を書くつもりでいた。しかし、結局それはあまりに知的問題であり、クライミングにおける世界観を構築しなければならぬ羽目に陥る危険があった。したがってここでは、観念的になることを避けてスポーツ科学では律しきれないクライミングの一側面についてのみ簡単に触れることにした。

クライミングは、おそらく他のほとんどどんなスポーツにも増して精神的な、またそれゆえ知的な挑戦である。クライミングほど運動形態とその可能性が多様なスポーツは、ほかにないだろう。

まったく同じクライミング・ルートは世界のどこを捜してもないのだ。それとは反対に、器械体操の演技はミュンヘンでもロサンゼルスでもモスクワでも同じである。そしてまた、あらゆるクライミング技術を完璧にマスターし、体力条件を最高に整えたとしても、ある一本の最難ルートにおける成功はまだ保証されたわけではない。なぜならそこには、肉体的ファクターを支える精神が参加しなければならないからだ。初見(未知)の登攀箇所の「チェスの問題」を解くのは精神である。

精神が長年の運動体験の蓄積の中から、当面の箇所に最も類似した動作パターンを瞬時に呼び出しそれから行動によってそれを現実する。したがって、初見ルートのクライミングは常に創造的行為であり、芸術行為とすら呼べる。クライミングにおける創造的要素の頂点は初登攀である。このときクライマーは自分自身の足跡を遺産として残すことになる。つまり、そのルートには、クライミングに対する自分の考え方が反映され、ライン選択、岩の与える物すべての完璧な利用、あらゆる確保の可能性の追求等における自分の創造力が反映される。初登攀は、まだ触られたことのない岩場にクライマーが描く絵であり、永遠に残るものである。

あまりに多くのクライマーが、フリー・クライミングの挑戦目標を、単に測定可能な要素、つまりグレードにのみ集中させている。クライミングもたしかに他のスポーツ同様、業績と数字によって成り立っている。そしてその業績は疑いもなく肉体と精神の複合的行為の所産である。しかしそれにしても、「フリー・クライミング」の世界の体験は、グレードという数字の枠内だけでとらえられるべきものではないと我々は考える。世界には数えきれないほどのクライミング・エリアがあり、そのどれにも独自の特徴と特殊な条件と魅力的な景観がある。だからこそ、どのクライミングエリアもグレードの数字の狭い枠をはるかに越えて挑戦のしがいがあるのだ。クライミングの真骨頂は、新しいルートを求め、未知の課題に取り組み、そこで繰り返し自分自身の創造力を検証することにある。未知のエリアを旅するごとに、我々は自分たちと同じ理想と世界観を発見したクライマーに出会う。個性豊かな人々が同じ精神を共有していることで知り合い、心のミニュケーションができ、仲間の輪が無限に広がっていく。我々は、クライミングを通じて大部分の友人と知り合えたと誓って言える。

何年も夢中にクライミングをしている者なら必ず、旅行に出かけて新しいことを知りたいという抑えがたい欲求の中毒となった経験があるだろう。旅と人々と他国に「中毒」になっているからこそ、我々は創造力を最大限に働かせ、常に未知のクライミングの可能性とエリアを求め続ける。

一つの目標を発見し、それに到達した瞬間に私たちの頭にはもう次の目標が浮かんでいる。私たちの最終目標となるような登攀旅行など決してないだろう。ありがたいことだ!仮に最終目標のルートを発見し、登攀してしまったら、何をしたらいいのだろう?ほかのスポーツにでも移るしかないのだろうか・・・・ クライミングは究極的にはきわめてロマンチックな人生観である。そこでは自分の体験の無限の可能性の前に、スポーツとしての業績や個々のグレードの価値は突然色あせてしまうのだ。

我々は、本書が読者のスポーツ的能力向上への道標になることを願っている。しかし同時に、読者がクライミングを実践することで、このスポーツの多様な側面を発見し、業績主義やグレードをはるかに超える体験を獲得してくれるよう祈っている。

ヴォルフガング・ギュリッヒ
アンドレアス・クービン