立甲が出来ると登れるようになるのか!?立甲が出来るようになって感じた事
こんにちは!グッぼるチーフスタッフの村口です。今回のテーマは立甲。楢崎智亜選手がやっているのを見て知っている方も多いハズ。しかしどうやってやるのか分からない、そもそも何の役に立つの?と疑問に思っている人に向けて、その方法とメリットを、あくまで僕の目線ではありますが、少し紹介しようと思います。興味がある方は読み進めてみて下さい。
立甲が出来ると登れるようになる?
結論から言うと、立甲ができる=登れるという訳には残念ながら行きません。僕自身もコレができたから直ぐに登りに反映出来た訳ではありませんでした。登りの癖というものはなかなか抜けない上に、意識しすぎて逆に登れない場合もありました。ただ今のパフォーマンスを維持するだけならいつも通り登った方が楽にさえ感じました。しかし、グッぼるサポートクライマーでもありV16以上を登る亀山君の登りを見ている内に、根本的に登り方が違うと感じました。この差はどこで生まれているのか不思議でした。そこで彼の動きを観察している内に、そもそも腕を引きつける時の力の入れ方が全く違う事に気づき、その違いに焦点を当ててトレーニングを始めました。背中の筋肉をしっかり使って腕を引きつけることでしたが、この動作をする事に立甲が役に立ちました。立甲が出来るようになった事で可動域が増え、今まで使用していない筋肉に力を入れる事が出来るようになった事に気づきました。それが分かるとそこにしっかり負荷をあたえれば自然と力もついてきます。それがここ最近ようやく形になってきたと感じています。
前鋸筋を使った登り
立甲が出来る事で、今まで前腕と肩の前側で行っていた引きつける動きもかなり変わりました。昔の方が今よりも筋肉も大きく、部位によってはいまより力があったにも関わらず届かないホールドが届くようになりました。写真の左が以前のロックで右側が現在のロックです。筋肉だけみても全身を使えているのが分かると思います。前鋸筋を使って腕を体幹に近づける事が出来ると背中側の筋肉が有効に使えるようになり、写真では分かりにくいですが、壁と前後の距離も調整可能になりました。その距離を利用して引きつけた状態からさらに絞るように距離を出す事も出来ます。前腕にかかる負荷も減らせるので非常にオススメです。
立甲の仕組み
立甲とはその名の通り、肩甲骨を立てること。そしてその結果、肩甲骨と上腕骨が一直線上に繋がる事を甲腕一致と言います。前鋸筋がしっかり作用していると、肩甲骨で体を支えるような感覚とともに、肩甲骨が立ち上がってきます。映像として有名なのはブルースリーの映画でのパフォーマンスやチーターでしょうか。動物は常にこのフォームに自然となっている為、運動能力が凄まじいと言われています。肩甲骨の裏側から肋骨に付着している前鋸筋が機能すると立甲の状態になり、どんな状態でもゼロポジションを実現する事で、腕の骨である上腕骨が肩甲骨にしっかりはまり、肩関節や体幹が安定します。結果、関節や筋の負担軽減やパフォーマンスの向上に繋がる理屈です。
立甲が出来るようになるには
肩甲骨自体の動きは挙上、下制、外転、内転、上方回旋、下方回旋で肩周りの動きサポートします。
- 挙上は僧帽筋、肩甲挙筋を使い肩をすくめる時の動き
- 下制は肩すくめた状態から肩を下げる動き
- 内転は胸を張る姿勢で肩甲骨同士を近づける動き
- 外転は腕をグッと前に伸ばし肩甲骨同士が離れる動き
- 上方回旋は腕を上げる動き
- 下方回旋は腕上げた状態から元の位置に戻る時の動き
これらの動きを全てコントロール出来ると立甲が自然と出来ます。この肩甲骨周りの筋肉が固まると動きが悪くなり、一部に負荷が集中して故障等に繋がります。僕自身はじめは全く力の入れ方が分からず、立甲をしようとしても肩甲骨を寄せる内転になってしまっていました。
肩甲骨の下制を身につける
登っていても肩が常に上がっている人は肩を下げて脇を締めるポジションが分からず、そのまま手首などを巻き込むようにホールドを握り、ガストンやハイアンダー等で肩や手首を痛めやすい傾向があります。自分自身も元々そういった登り方で手首をよく痛め、首や肩コリを絶えず感じていました。しかしこの肩を下げる事を理解するととたんに立甲が出来るようになりました。まず肩甲骨周りの筋肉の緊張(僕の場合は特に菱形筋)を解す事がある程度重要で、その後、鎖骨のあたりから腕全体を地面押し付けるようなイメージで肩が下がった瞬間に理解出来るようになる感じです。
クライミングにおける立甲のメリットまとめ
- どんな状態でも出来るだけゼロポジションをキープする事で、肩の怪我が多いクライミングにおいて肩甲上腕関節の負担軽減に。
- 肩甲骨の動きが良くなる事で、肋骨や背骨の可動性も連動的に向上します。肩甲骨や肋骨・脊柱の可動性が拡がることで、大きいムーブなどの動作では上肢の操作性と力が増し、パワーロスが少なくなります。
- 肩の無駄な力身を抑え、体幹や下肢からの力を有効に使える。多くの場合、クライミング初心者や慣れていない人程、肩の力みが出やすくなります。立甲を習得することで、力が入るべき場所=前鋸筋やローテーターカフが機能し、余計な筋肉(僧帽筋・肩甲挙筋など)の力みを抑える事が出来ます。
如何でしたか。立甲をすることがゴールではなく身体操作を理解できる事によるメリットが大きいと感じています。立甲が出来なくても無意識に力が入るべき場所で体をコントロールしているクライマーは実際上手い人程多いです。むしろそういったトップクライマーよりそのレベルになかなか到達出来ないクライマーにこそ効果があると思います。興味がある人は是非チャレンジしてみてください。


