さらなるパフォーマンスを追求するクライマー達
純粋にクライマーが持つフィジカルのみで岩に挑むボルダリング。岩の攻略へギアに頼らずに自身を鍛えることが求められます。新しい岩場開拓の進捗と同時にクライマーの実力も年々向上。強いクライマー達のトレーニング理論が次世代の成長を引き上げている印象があります。岩の最年少記録やコンペシーンでの活躍にも表れています。初登者が難易度の高さからスタンドスタートとした課題のシット(SD)による初登も増加。こうしたボルダーの高グレード初登が加速して増えています。
世界最難グレードが提唱されたボルダリング課題
初登者が登ったときの体感で提唱される「グレード」。これまでにV17(6段+)というのグレードの付いている課題は全世界に4つあります。
- Burden of Dreams(フィンランド)
- No Kpote Only(フランス)
- Soudain Seul(フランス)
- Return of the Sleepwalker(アメリカ)
Burden of Dreams V17 フィンランド
2016年10月25日ナーレ・フッカタイバルが初登。Burden of Dreamsは圧倒的なカチ課題。130°に傾斜した岩にエッジが立ったカチが並んでいます。カチを握ってフットホールドを滑らないように踏み続けなければいけません。カチを持ってある程度の余裕がなければそもそもムーブが起こせません。そしてもう1つ特徴的なことは手数の少なさ。わずか5手。パワーエンデュランスは必要無い短さです。まさに1手1手の繊細さが際立ちます。初登者であるナーレは4年の歳月をこの課題にかけました。5手を繋げるために4年。相当なストレスを感じながらトライする日々であったことは間違いありません。現地でナーレに会った際にも「かなりストレスだった」と話していました。
Return of the Sleepwalker V17 アメリカ
2021年3月30日ダニエル・ウッズが初登。もともとV16とされているSleepwalkerに3手のムーブを足した課題。全体で実質11手とされています。Sleepwalkerはすでに3人が再登。初登者のダニエル・ウッズは3ヶ月の集中的なトライの末に3手を足して完登。傾斜でアンダーが連続する課題のため全身のパワーと持久力も試されます。1手1手のムーブだけなら何度もできるものの、繋げトライがヨレとの戦いだったようです。最後にフルリーチに近い核心が出てくるのが難易度を上げている要素になっています。
V17を登るためになにが必要か
「人類の限界を超える」といっても過言ではない世界最難のボルダリングを目指すには本当は何が必要なのか。またそのような課題を初登するには何が必要なのか。懸命に考えても結局は「触って登ってみる」に尽きるのですが、思いつきの感想が何かのヒントになればと思っています。
圧倒的なカチorパワー
2つの課題を比較するとタイプとしてはカチorアンダーのパワーかに分かれています。どちらも世界で登り回っているトップクライマーが同じ最難となるグレードV17を提唱。まだこの2課題に再登者はいません。課題のタイプこそ違えどかなりの期間をかけて初登されただけに「いつ再登するクライマーが出るのか」も気になるところです。個人的な印象としてはBurden of Dreamsは個々のムーブ強度が高く「1手が全くできない」課題。Return of the Sleepwalkerはムーブは出来ても「繋げるのが難しい」課題のように思います。
再登者によって最難が確定される
V17というまだまだ不確定な最難グレード。複数のクライマーによってトライが重ねられて確かなものになっていくと思われます。さらには長年プロジェクトとされていた課題が初登され、新たなV17が誕生することも増えてくるでしょう。各国それぞれの地域でクライマーがさらなる難易度とパフォーマンス向上を追求しているからこそと言えます。
コロナによる制限がなくなることを願う
昨今のコロナによって国境間の移動は簡単に行えるものでは無くなりました。クライミング界にとって、記録の更新にこれほど外的要素が加わる時代が来ることを誰も想像していませんでした。挑戦の機会を失った形となり自分自身も落胆しています。少しずつコロナから回復し、以前のようにクライマーの往来がしやすい状況になることを信じトレーニングに励むしか今はできません。この先、いかなる状況でも、世界中のクライマーは自己実現のために岩を登ることをやめないでしょう。同様に希望をもってV17を登りたいと思っています。


