ちょうど一年前のブログを振り返ると何の為にコンペに出続けるのか、想いを綴っていた。あれから一年、多くのコンペに出場し様々な経験をした。その中でも特に印象に残っているものを書いてみようと思う。

打ち砕かれた自信

今年の2月に行われた THE NORTH FACE CUP 大阪予選大会に出場した。知る人ぞ知る国内最大級のコンペ。毎年この大会を一つの大きな目標とし、照準を合わせている。会場はPUMP大阪。今の自分の実力なら絶対勝てる、以前ここで開催されたコンペでの戦績もよくかなり自信があった。

予選開始。コンペを何度経験してもファーストトライの緊張感には慣れない。順当に課題を攻略し完登を重ねていった。気付けば残り時間は15分、この時点で同率2位だったがかなり混戦していた。気持ちが少し焦る中追い討ちをかけるようにアクシデント発生、乗り込み系の課題で右膝裏の筋を痛めてしまった。その後は何も登れず予選終了のブザーが鳴る。リザルト画面を確認すると自分の名前は予選通過ラインの真下に。ゾーン差で予選敗退。愕然とし、しばらくボーッとしていた。帰路の車の中内容を振り返る。・・・弱かった。ただそれだけだ。アドレナリンが切れ痛む右膝を抑えながら自分の弱さを思い知った。

弱点と向き合う

右膝の治療ため岐阜県瑞穂市にある整体院CLIMBER AID PID 通称“CAP”に通い詰めた。グッぼるケアでおなじみの窪田先生が経営する整体院で多くのクライマーの拠り所となっている。今回のケガの原因はやはり自分自身の柔軟性の無さにある。この弱点を克服しない限り今より上のステージでは戦っていけないだろう。そう思い右膝の治療が完治した後もCAPに通い続け、股関節の可動域と柔軟性の改善に取り組んだ。ストレッチの内容はもちろん、それを行うタイミング、アフターケアのことなど具体的に弱点を克服する方法を学んでいる。継続して数ヶ月、劇的に柔らかくなったという訳ではないが明らかな動きの変化を感じている。また時間をかけてストレッチを行うことで可動域が広がりその日のパフォーマンスを最大限発揮できることも体感している。まだ理想とは程遠いが弱点と向き合い、今は少しでも前進していこうと思うようになっていた。

あの敗戦を経てからも様々なコンペに出続けた。そしておよそ半年、8月3日に開催されたコンペ8DX2020大阪大会に出場し思いもよらぬ結果を出し大切な気持ちを思い出す大きなキッカケとなった。

挑戦 ~ 8DX2020大阪大会

昨年も出場経験があるこのコンペだが今年はオープンクラスでのエントリー。同じクラスには日本代表の井上祐二選手を筆頭にユース世代の有名な選手や、岩場で五段を登る名の知れたクライマーなどまさに強者揃いだった。そうそうたるメンバーの中登れることに喜びを感じる反面、プレッシャーに気圧されそうになったが自分のやれることをやろうと気持ちを引き締めた。

このコンペはセッション方式のラウンド制で一時間を3ラウンド繰り返し制限時間内に登れた課題の合計得点で競う。かなりタフなコンペだ。第一ラウンドは難しい課題に挑戦しつつも出来る課題を少ないトライで完登することができ、かなり落ち着いて課題に取り組めた。ラウンド間にドクターエアで全身をほぐしながら次の作戦を考える。体力的にも第二ラウンドが勝負になる、他の選手も皆そう思っているだろう。だからこそ大胆に攻める。気持ちは一周回ってむしろ強気になっていた。第二ラウンドのファーストトライ、強傾斜の一級を一撃すると一気に勢いづく。残りの二級を一撃で完登し、一本の初段に的を絞った。サイファーで体を引き上げアンダーガバを抑えるコーディネーションランジ課題。完登出来る自信があった。核心のランジをとめゴールマッチで苦しみながらも何とか完登。思ったよりトライを重ねてしまったが初段を登れたのは大きい。最終ラウンドは序盤に二段に挑戦するも全く歯が立たず、それでも気合でボーナスを2つ獲得し得点を稼いだ。最後はヨレヨレになりながらも何とか三級を回収し終了。出し切った。そう思った途端、張り詰めていた緊張がほぐれ安堵した。この時は結果などもはや気にもしていなかった。

憧れを目指して

結果発表。別グループの選手の完登率は全く把握しておらず、明らかに自分より優れた選手も大勢いて正直、表彰台は厳しいだろうと思っていた。疲労感で頭がボーッとしながら表彰式を眺めていると突然自分の名前が聞こえた。まさかだった。オープンカテゴリー第二位。驚きを隠せぬまま表彰式を済ませると達成感と喜びで満たされていった。これまで中々思うような結果が残せず悔しい思いをたくさんしてきた。何のためにコンペに挑み続けるのか、何のために今ココにいるのか、サラリーマンを辞め強くなりたい一心でクライミング界へと飛び込んだ。あの時感じていた大切な気持ちを思い出した。コンペという舞台に魅了され、いつか自分もトップクラスで戦ってみたいと憧れを抱き続けてきた。それが今こうして形となっている。これまでしてきたことは無駄ではなかった。もちろん、今の自分の実力に慢心など全くできる状況ではないし、ただ運良く2位になれただけであることは理解している。それでも今はこの喜びを噛み締め素直に嬉しいと感じそれをモチベーションにできる心の余裕も必要だと思った。

これから先に強くなれる自分を楽しみにブレずに練習あるのみ。日本最高峰の舞台であるジャパンカップを目指してレベルを上げたい。そうプラスに意識できる自分の成長を感じている。